パソコンでテレビレコーダーを作る 序章

パソコン用テレビチューナー

今から14年ほど前、パソコン用のBUFFALO製地デジチューナーを使ってテレビを観ていた時期が筆者にはあるのですが、録画した番組を自由にコピーしたり編集出来ないといった制限だけでなく好きなプレイヤーで再生する事すら出来ない不便さにうんざりして次第に使用する機会が減っていきました。それから何年かしてW録画出来るテレビを購入したり、録画番組の再生のもっさりした動作に嫌気がさしてnasneの2台体制になったりと筆者のテレビ録画環境は紆余曲折変化していきました。

結果的にnasneの2台体制は番組検索や録画操作、録画番組の再生において非常に快適で、殆どの用途が見て消しの筆者にとってはそれなりに満足出来る環境ではあったのですが、極一部の長期間残しておきたい録画番組だけはコピー制限の都合上、不満もありました。nasneの場合はパソコン用ソフトを使って録画番組をDVDやBDに焼く事も出来ますが、今時ディスク化した所でディスクを入れたり直したりという作業が面倒なので、もっと楽で自由なテレビ番組の録画環境を構築出来ないものかと以前から考えていました。

禁断のTS抜きチューナー

結果、遂に手を出してしまったのが俗にTS抜きと呼ばれるパソコン用テレビチューナー。この手の製品で最も有名なのはアースソフトのPTシリーズで、かなり昔から存在は知っていましたが普通に販売されていた頃はあまり興味が無く、欲しくなった時には中古がプレミアム価格で販売されている状況で買い時を完全に逃してしまったのですが、丁度テレビ録画機にするのに良さそうなパソコンが安く入手出来た為、アースソフト PT3の中古価格とほぼ変わらないPLEX PX-W3PE5の購入に至りました。

PLEX PX-W3PE5

TS抜きテレビチューナーは他の一般的なテレビチューナーと比べて導入のハードルが高いと聞いていたので不安な部分もあったのですが、最低限の動作が確認出来る所にまで辿り着くのはあっけない程に簡単でした。ただTVTestという汎用的なソフトにテレビ番組の画面を表示するまでなら事前に情報や必要なソフトを収集していた事もあって1時間も掛からずに達成出来たのですが、完全に自分の求める環境の構築と安定動作においては1ヵ月近く時間を費やしました。

TS抜きチューナーのメリットとデメリット

TS抜きチューナーの最大のメリットはやはり録画したテレビ番組を自由に扱えるという点に尽きます。録画ファイルは一般的な動画ファイルと同じなので自由にコピーしたり編集が行え、自分の愛用しているメディアプレイヤーで快適に再生する事が出来ます。見て消しスタイルの場合、あまりこのメリットの恩恵を感じる事は多くはありませんが、長期間保存しておきたい番組があった場合のメリットは大きいと思われます。

逆に一般的なテレビレコーダーとの比較におけるデメリットを下に纏めると

  • 導入が面倒
  • 安定性で大きく劣る
  • 一般的なパソコンでは無駄に電気代が掛かる
  • 録画しながらの圧縮変換機能が現状無い
  • チャプター挿入機能が無い

1つ目の導入が面倒な点はTS抜きにおいて完全なマニュアルがある訳でもなく、ネット上に情報は沢山ありますがそれが逆に混乱の元になる事もあり、パソコンの経験値の低い方の場合は動作させる所まで辿り着けない可能性もあります。

2つ目の安定性の点ですが、最初からテレビ番組を録画する事を目的に作られたテレビレコーダーと異なり、様々なプログラムが動いているパソコンでの録画では安定性で劣るのは仕方ない部分だと思います。また、セキュリティー機能やOSのアップデートが悪影響を及ぼす事もあります。

3つ目の電気代の点では元々消費電量の多いパソコンにテレビチューナーを接続して使用していると、当然ながら一般的なテレビレコーダーよりも電気代が増える事になります。筆者は当初、サブPCにテレビチューナーを接続して使用しようかと迷っていた時期があったのですが、サブPCのアイドル状態での消費電力が45Wほどあるので、結果的に消費電力の低いパソコンを別途購入しました。

4つ目と5つ目の圧縮変換機能とチャプター挿入については、一般的なテレビレコーダーなら2倍録画や3倍録画が当たり前のようにあり、CMに切り替わる場面でチャプターを自動挿入する機能もありますが、現状ではTS抜きチューナーで使用出来るソフトで同等の機能を備えた録画ソフトは存在しないようです。但し録画ソフトと連携して録画終了後にCMシーンを検出してチャプターを挿入(もしくはCMの部分を削除)した上、変換を自動で行うソフトはあるので、導入が面倒なもののこの点は解消出来ます。いずれ誰かが録画しながらのエンコードとチャプター挿入機能を備えた録画ソフトを作ってくれないかと密かに期待していますが、ニッチな分野だけに恐らくこの先も可能性は低いでしょう。

TS抜きチューナーを約1ヵ月ほど使用した感想

上の方でも書いたようにテレビ画面を表示させるまではあっさり行けたので当初は自身が想定していたよりもずっと簡単な物だと感じていましたが、安定して予約録画が出来るようになるまでには苦労しました。導入初期から非公式ドライバを使用していましたが、2日か3日ほど経過すると「BonDriverの初期化ができません」というエラーが出てテレビが受信出来ない状況に陥り、デバイスマネージャーからチューナーが消える現象を何度も経験しました。

ドライバを公式の物に変えてみたりBonDriverを変えてみたりと試行錯誤したのですが、公式ドライバでもデバイスマネージャーから消える現象が頻発し、もしかしてチューナーの初期不良なのかと返品手続きのギリギリの所まで行ったのですが、チューナーが消えるきっかけがスリープからの復帰時である事を突き止め、更に映像出力関連に原因がある事が分かり解決する事が出来ました。

現在はデバイスマネージャーからチューナーが消える事が一切無くなり安定して予約録画出来ていますが、ここまで辿り着くのにUEFIの設定やWindowsの設定を色々と変えて検証したりとかなり苦労しました。nasneの2台体制からパソコン用テレビチューナーへの移行は正直それほど良くなった部分が無い所か不便に感じる部分も少なくありませんが、録画ファイルを自由に扱える点は勿論の事、以前からTS抜きチューナーという物に技術的な関心があったので満足度は高いです。そして丁度この記事を書いている現在、サッカーのUEFA EURO 2024が深夜に放送されているので、毎日のように録画してサッカーの視聴を楽しんでいます。

約1年使った感想

丁度TS抜きチューナー装着の録画用PCを構築してから1年ほど経ったので改めて感想を追記しておきます。録画用ソフトEDCBのみの環境では不満もありましたが、苦労したもののAmatsukazeの導入によってテレビの録画、視聴環境が非常に快適になりました。1度環境を構築してしまえば筆者が過去に使用していたnasneやBD/DVDレコーダーよりずっと快適な録画環境だと感じます。

ただWindowsのアップデート後に2回ほど予約録画に失敗したりBSのチャンネル移動の影響で今まで録画していた番組が録画出来ていなかった事故も発生しており、安定性の面ではやはり一般的なレコーダーに劣るのを感じました。そのようなPC用テレビ録画チューナー特有の問題も時折ありますが、今はそのようなデメリットよりも自由に録画ファイル扱えるメリットの方が上回っていると考えています。また、本来購入の本命チューナーはアースソフト PT3でしたが、PT3の中古相場と比較しても安いPLEX PX-W3PE5で十分に満足しています。

録画した番組を制限無く自由にコピーして編集出来るというのはやはり便利で、元々高くなかったテレビの視聴時間は更に減っているものの、もっと早く購入していれば良かったとすら思っています。万人にお勧め出来る訳ではありませんが、テレビが好きという方よりはPCをイジルのが好きな方、TS抜きチューナーに技術的な興味のある方、多少の手間と時間を使っても録画番組を自由に編集して長期間残したいと考えている方には強くお勧め出来ます。

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