
Webサービスに登録してある大量のアカウントを管理するのは大変ですが、最近ではWebブラウザ自体にIDやパスワードを記憶して自動入力を行うパスワードマネージャ機能が搭載されているので、それを利用されている方も多いと思います。ただIDとパスワード以外にネットバンクなどではログインする為の入力項目が3つ、4つあったりしますし、異なる種類のWebブラウザを使っている場合はアカウント情報の同期を手動で行うのが面倒でもあります。そんな時に便利なのがBitwarden。BitwardenはEdgeやGoogle Chrome、VivaldiといったChromium系、Firefox他、様々なWebブラウザに対応するパスワードマネージャで、ログインの為に3つや4つ入力が必要なサービスの他にクレジットカード情報の管理やちょっとしたメモを暗号化して保管出来る上、自動入力からWebサービスにログインを行う事が出来ます。
上で挙げた以外の特徴としてはIDやパスワードといったアカウント情報はクラウド上に保管されるので、異なるWebブラウザや異なる端末間でもアカウント情報を同期する事が出来ます。筆者は使用当初、クラウドにアカウント情報が保管される事にやや不安がありましたが、強力に暗号化された状態で保管されている上に過去に情報漏洩を起こした事が無いそうで、かなり信頼度は高いです。
他、現在Webブラウザで使用しているアカウント情報やロボフォームといった多数のパスワードマネージャからのデータのインポートに対応しているので、移行も容易に行う事が出来ます。しかも個人利用であれば登録数の制限なども無く殆どの機能を無料で使用出来ます。
Bitwardenのアカウントを作成
まずはBitwarden公式サイトからアカウントを作成します。ページ上部にある「開始する」をクリック。

一見有料プランしか無いように見えて紛らわしいのですが、初期状態でビジネスプランになっているのを「個人的」に切り替えてから「今すぐ利用を開始」をクリックします。

「Email」となっている入力欄にメールアドレスを入力して「サインアップ」をクリックします。因みに「Get advice, announcements…」となっている部分はBitwardenから情報を受け取る設定で、必要無ければチェックは不要です。

登録したメールアドレス宛に認証用のメールが送信されるので確認します。

Bitwardenからのメールを開き「Verify email」をクリックして認証します。

マスターパスワードの設定画面が表示されます。記載通り12文字以上を登録。@や#といった記号や英字、数字を混ぜて簡単に破られないパスワードを登録して下さい。マスターパスワードのヒントは日本語で登録しても文字化けするので英数字で設定しておく必要があります。

パスワード登録後、Bitwardenの保管庫のページが表示されます。これでアカウントの登録は完了です。

Webブラウザ用の拡張をインストール
Bitwardenの保管庫のページ上部にもブラウザ拡張機能のリンクがありますが、Bitwardenのダウンロードページから各ブラウザの拡張のページへのリンクがあるので、現在使用しているブラウザに対して拡張をインストールしておきます。

データのエクスポートとインポート
Webブラウザやパスワードマネージャから既存のアカウント情報をエクスポートします。Google Chromeの場合は右端の3点ボタンから「パスワードと自動入力」「Googleパスワードマネージャー」と進み左上にある3本線のボタンの「設定」から「パスワードをエクスポート」欄の「ファイルをダウンロード」で、ログインIDやパスワードの情報が記載されたファイルをエクスポート出来ます。

Firefoxの場合は設定の左メニューにある「プライバシーとセキュリティー」から「パスワード」欄にある「保存されたパスワード」を開き、右上の3点ボタンのメニューから「パスワードをエクスポート」で、データをエクスポートする事が出来ます。

他、大概のパスワードマネージャにはIDやパスワードのログインデータのエクスポート機能がある筈なので、事前にエクスポートしてファイルを保存しておきます。
今度は保存したファイルのデータをインポートします。インポートはBitwardenのWebページからでも行えますが、ここでは拡張から行う例を記載していきます。まずBitwardenの拡張画面を開いて下部の「設定」から「Vault options」を選択、「アイテムのインポート」と進みます。

インポート画面で少し下にスクロールして「データ」欄にある「ファイル形式」でインポート対象のファイルの種類を選択。更に下で「ファイルを選択」からエクスポートしておいたファイルを入力。最後に「データのインポート」ボタンをクリックするとインポートが実行されます。

インポートが成功すると「データをインポートしました」と表示されます。
ログインアカウントの保存と登録
標準設定のままであればWebサービスにログインすると画面右上に「このパスワードをBitwardenに保存しますか?」と表示されるので「保存する」を選択すればBitwardenに登録されます。

ただ、ログイン時に毎回パスワード保存の通知が表示されるとは限らず、サイトによっては全く無反応な場合もあります。そんな場合は手動でログインIDとパスワードをBitwardenに登録します。拡張画面を開き「保管庫」にある「新規作成」をクリック。種類の選択メニューが表示されるので「ログイン」を選択。

「アイテム名」に任意の名前、「ユーザ名」と「パスワード」にそれぞれログイン情報を登録、更に下にある「ウェブサイト」にログインページのアドレスを入力して「保存」で登録。

ログインページでの自動入力
ログインページでの入力欄への自動入力においては幾つかの方法がありますが、Bitwardenの拡張ボタンから保管庫を表示して「自動入力の候補」にある「入力」ボタンをクリックすると入力欄に自動入力が行われます。それ以外では入力欄自体を直接クリックすると候補が直ぐ下に表示されるので、そこから自動入力を行う事も可能です。

他、Bitwardenの設定で「自動入力」にある「ページ読み込み時の自動入力を有効化」にチェックを入れて下にある「ページ読み込み時に自動入力する」に切り替えておくと、ページを表示した瞬間に自動入力が実行されます。候補が複数ある場合は入力欄下に候補が表示されます。
入力欄が3つ以上ある場合
殆どのWebサービスのログインはIDとパスワードの2つで構成されていますが、PayPay銀行は店番号、口座番号、パスワードの3つで構成されていますし、ゆうちょダイレクトは最初に3箇所の入力が必要となっています。これら3つ以上入力が必要なネットバンクなどのログインで自動入力を行う方法として「カスタムフィールド」を使用します。PayPay銀行を例にすると口座番号が「ユーザ名」、パスワードはそのまま「パスワード」として認識されるので、後は店番号が自動入力されるように設定します。
まずは店番号の入力欄で右クリックしてメニューの「Bitwarden」から「カスタムフィールド名をコピー」でクリップボードにフィールド名をコピーします。因みに「idTenNo」という名前になっていました。

ログインの新規作成や編集画面で下までスクロールして「+フィールドを追加」をクリックします。

「フィールドタイプ」をテキスト、「フィールドラベル」に上で調べておいたフィールド名を入力して、「追加」をクリックします。

カスタムフィールドとして入力欄が追加されているので自動入力させたい文字列を登録して「保存」をクリックします。

この方法でIDやパスワード以外の入力欄がある場合に対処する事が出来ます。また、カスタムフィールドの追加によって特殊な入力欄にも対応出来るので、様々な応用が可能です。
Bitwarden 備考
かなり長くなったので設定部分などは書ききれない所もありましたが、特別難しい設定が有る訳でもありませんし、日常的に使用していれば直ぐに使い慣れると思います。ただ一部のログインページで自動入力が動作しないという現象が時折発生します。最近だと筆者の環境ではYahoo!のログインページで候補までは表示されても自動入力が実行出来ない状況になっていますが、多少の妥協は必要。その場合は入力ボタンの隣にあるコピーボタンからコピーして貼り付けで対処しています。
上では触れていませんが新規作成から「カード」でクレジットカード情報を登録しておくとカード番号の入力が必要な時に、ログインと同様に自動入力が行え非常に便利です。他に暗号化して保管しておきたいメモも作成出来ますし、IDでは名前、住所、電話番号といった個人情報を登録しておく事も出来ます。
冒頭の方でも書いたようにデータはBitwardenのクラウドに保管されるのでデータを紛失する可能性は非常に低いのですが、筆者の場合は万が一に備えて「設定」にある「Vault options」から定期的にエクスポートを行っています。エクスポートしたデータは別のソフトで暗号化して保管しているのですが、その件についてはまた別の機会に掲載する予定です。
(追記)Bitwardenはこの先、パスワードに代わり主流になるであろうパスキーの管理にも対応しています。Bitwardenでパスキーを使用する方法についてはログイン方法をパスワードからパスキーに変更するの記事に掲載しています。
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